(1)二次構造としてαヘリックスとβシートの両方をもつデノボCro蛋白質のフォールディング特性を円二色性(CD)と赤外(IR)分光法を用いて解析した。その結果、天然蛋白質では異なる二次構造がその変性過程において同時に協同的に壊れるのに対して、NMR構造が解かれているデノボCro蛋白質では、βシートだけが協同的に早く壊れ、αヘリックスは非協同的にゆっくり壊れることが明らかになった。また一般的なアミロイドの二次構造はβシートからなることが知られているが、デノボCro蛋白質は、αヘリックスをその構造の一部として保持しつつ、顕著なアミロイド形成能を示すことが明らかになった。 (2)天然には存在しない蛋白質の新規構造をターゲットとして、アミノ酸組成について拘束条件を設定し、アミノ酸配列の最適化計算を行った。良好な立体構造モデルが得られた複数の設計配列とその変異体を合成し、CDとNMRにより、構造物性の測定を行った。塩基性の等電点と天然蛋白質程度の大き過ぎない平均残基分子量の組成制限は、立体構造形成に有効であった。しかし、今年度得られたた試料の中で最も二次構造含量の高いものでさえ、モルテングロビュール状の物性を示し、詳細な立体構造解析に耐えられるものでは無かった。そこで、設計に使用したものとは異なるポテンシャル関数と最適化法を用いて、大量の計算配列の構造予測を行い、天然様のコンパクトな立体構造に折り畳まれると予想される配列の検索を行い、初期の設計配列のスコア値では100位以下であった複数の配列が、良好な折りたたみ可能性を示すことが示唆された。
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