研究概要 |
近代文明の発達とともに、野生動植物は存続の危機に瀕しており、種の保護保全はもとより、種の多様性の確保維持も重要な課題となっている。申請者らは、稀少野生動物、絶滅危惧動物を含む約4,000個体のゲノムDNAを保有している。本研究は、個体の遺伝情報をDNAとして抽出、保管し、遺伝資源として広くユーザーが利用できるシステムを構築することによって、稀少動物の遺伝情報の保全および活用を目指す。20年度は、(1)これまでに引き続きDNAバンクの整備を目指して、新たにDNAを抽出し、ゲノム増幅の条件を決定した。(2)これらの試料の個体情報をさらに充実させるため、また飼育園館や飼い主の協力を得て性格評定を行った。さらに(3)DNAバンクの遺伝子多型解析を行い、外部研究者への試料および情報提供などの有効活用を開始した。(1)については、野生動物研究センターと連携している京都市動物園、名古屋市東山動物園と、飼育全個体のDNA試料保存を目指す計画で、大型類人猿や食肉目の試料採取を開始した。また伴侶動物では、イヌとネコの試料を採取した。霊長目76種5,179個体、イヌ118品種5,264個体、その他の哺乳綱12種1,350個体、ニワトリ71品種(集団)3,800個体、その他の鳥綱106種1,014個体など、総計16,607個体のDNAを得た。(2)これらの試料のうち、チンパンジー、ゴリラ、イルカ、イヌ、ネコの性格評定を行ったところ、イヌでは性格と遺伝子型に関連がみられた。(3)については、イルカで新たな遺伝子多型を見いだした。またチンパンジー、ジャコウネコ、イルカの共同研究で、データバンクのDNA試料を、共同研究者の試料との比較解析に用いた。
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