研究課題
本研究は、東南アジア大陸部を対象として、土地をめぐる環境保全と貧困削減の二律背反という現状を、より長期的な土地利用のダイナミズムに位置づけることにより、環境保全と貧困削減が本来的にもつ相補的な関係の再構築を目指す。そのために、ミクロなレベル(例えば村レベル)を対象として、長期的な土地利用変化のパターンを明らかにしてその要因を分析するとともに、地域住民による生活・生業実践としての土地利用と環境保全や貧困削減などの政策プログラムが誘導しようとしている土地利用との整合性を検討する。これまの研究成果は以下の2点に集約される。1) ミクロなレベルの土地利用は、戦争や政治体制・経済システムの転換などの国レベルの制度・政策に必ずしも支配されていない。それよりも、東南アジア大陸部というような、より大きな地域(region)レベルにおける資本主義・市場経済の浸透や統治制度の近代化などのより大きな社会経済変動の影響を強く受ける。これは地域住民の生活・生業転換が、一国単位の政治的なイベントではなく、地域住民レベルで共有される時代性に支配されていることを示唆している。時代性を共有するメカニズムを可視化することは困難だが、きわめて多様なものと考えられる。そのなかで、いわゆるマーケット・メカニズムや政府による開発プログラムは、一つのメカニズムでしかない。それらに加えて、個々の人々の経験、コミュニケーションや相互観察が時代性を形成している。2) 過去数十年において、環境保全と貧困削減の調和という観点から最も意味のある生活・生業転換は、農民が自給を放棄し始めたことである。自給農業からの離脱は、農民に作物選択や職業選択の自由をもたらすので、資源利用の観点からは資源競合を緩和するので両者の調和を容易にするが、資源管理主体の不明瞭化やローカルな資源管理の弱体化を招いている可能性が大きい。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) 図書 (2件)
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