研究課題/領域番号 |
18310160
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河野 泰之 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (80183804)
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研究分担者 |
柳澤 雅之 京都大学, 地域研究統合情報センター, 准教授 (80314269)
縄田 英治 京都大学, 農学研究科, 教授 (30144348)
梅崎 昌裕 東京大学, 医学系研究科, 准教授 (30292725)
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キーワード | 東南アジア / 土地利用 / 環境保全 / 貧困削減 / 生活・生業 / 自給農業 / 自然資源管理 / 村落調査 |
研究概要 |
本研究は、東南アジア大陸部を対象として、土地をめぐる環境保全と貧困削減の二律背反という現状を、より長期的な土地利用のダイナミズムに位置づけることにより、環境保全と貧困削減が本来的にもつ相補的な関係の再構築を目指した。そのために、ミクロなレベル(例えば村レベル)を対象として、長期的な土地利用変化のパターンを明らかにしてその要因を分析するとともに、地域住民による生活・生業実践としての土地利用と環境保全や貧困削減などの政策プログラムが誘導しようとしている土地利用との整合性を検討した。主たる研究成果は以下の3点に集約される。 1)ミクロなレベルの土地利用変化の要因は、ローカル・レベル、国家レベル、地域レベルに区分することができる。ローカル・レベルの要因は人口動態や商品作物・農業技術の導入等、国家レベルの要因は戦争や政治体制・経済システムの転換等、国レベルの制度・政策の変化、地域レベルの要因は資本主義・市場経済の浸透や統治制度の近代化等、より大きな社会経済変動である。 2)これら3つの要因が整合的に作用する場合には、土地利用が円滑に調整される。1990年代後半以降のベトナム北部がその典型例である。ローカル・レベルにおける農業集約化技術の導入による焼畑農耕から常畑農耕への転換、国家レベルにおける農民の土地使用権確立と造林事業の推進、地域レベルにおける森林保護政策の展開が、多様な土地利用形態の農地と森林の二区分への収斂を促進した。その結果、ベトナムは、東南アジア諸国で初めて、森林面積の減少傾向を食い止めることができた。 3)3つの要因を踏まえて、どのような土地利用が最も望ましかを一義的に判断することはできない。それはローカル社会、国家、地域社会のせめぎ合いという不合理な妥協の積み重ねによって生まれる合理性に基づいて判断されるべきものである。
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