研究課題
本研究は、全世界的にすでに蓄積されてきたジェンダー論の知見を活かしながら、現在の日本社会におけるジェンダー・フリーバッシングや女性の貧困などに対して実践的な提言を行っていくことをひとつの目的としていた。そこで、「正義」をテーマに、労働市場、国際移動、移民、女性の表象、国際比較といった視点から、現代日本における社会正義を実現するための男女平等とはいかなるものか、いかなるものであるべきか、といった問いに応えた。その内容としては、第一に「女性・労働・移動」をテーマに開催したシンポジウムを開催し、市場経済においてもっとも脆弱な位置にある女性たちが、国境を越えつつも、外国におけてもなお指摘領域における労働(=家事労働)に就く、という一見した矛盾から、公私二元論の現代的なありようを考察した。また、日本におけるナショナリズムとジェンダーの問題を、現代のメディア状況から考察する「フェミニズムとメディア」題したとシンポジウムを開催し、国際的正義を要請した従軍慰安婦制度に対する日本の報道の在り方について、映像媒体・文字媒体の双方から批判的な検討を行った。さらに、地方自治体において顕著になっているジェンダー・バッシングの動きに関するシンポジウムでは、学生や市民に広く参加を呼びかける形で開催し、憲法において保障されているはずの、人格権の尊重や、両性の平等をよりよく実現するための「男女共同参画条例」が、「真の男女平等を実現する」といった掛声の下に、「性別の本性にみあった役割分業」を押しつけるものへと歪曲されているさまを、そもそもの憲法の精神に基づいて批判する機会を提供した。
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