本研究は、医療倫理学の方法論を、「原則論か物語論か」という二者択一ではなく、両者の方法論上の関係を検討し、両者の有機的な結合の基盤を構築することが本研究の目的である。具体的には、以下の3点を明らかにすることを目指した。 (1) 元フティヴ・データによる倫理的ジレンマの再構成-医療の諸領域における倫理的ジレンマを、当事者の語り(ナラティヴ・データ)によって再構成する。 (2) 倫理的ジレンマの物語論的分析-当事者によって認識されている倫理的ジレンマの物語論的な構造を分析する。 (3) 物語論的に再構成された倫理的ジレンマの、原則論的な分析-物語論的に再構成された倫理的ジレンマについて、倫理原則への参照や、それを用いた推論が可能かについて検討を行う。また、これまで欧米の研究者らによって提案されてきた原則のセットが、十分に適用可能なのか、それともさらに別の原則を要請するのかを検討する。
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