本研究では、インドのさまざまな宗教的な空間が、どのような形態と象徴性をそなえ、それがインドの文化や思想にいかなる影響を与えたかを、学際的に考察する。伝統的なインド学仏教学においては、空間が主要な研究テーマとされることは、国内外を問わず、ほとんどなかった。しかし、インドに限らず、宗教一般において、空間がどのようにとらえられ、どのように表現されたかという問題は、その宗教を理解する上で、きわめて重要な意味を持つ。儀礼空間や聖地、巡礼などの問題も、空間の表象として理解することで、通文化的な問題となる。本研究では、このような多角的な視点にもとづき、学際的な空間研究を行うことで、インド学仏教学にとどまらず、宗教研究や文化史に関わる新しい領域を生み出すことをめざす。さらに、日本をはじめとするアジア諸国とインドの宗教的な空間が持つ象徴性についての比較研究を通じて、それぞれの文化の持つ独自性とともに、インドの諸宗教の持つ普遍性や多様性も明らかにする。
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