研究課題/領域番号 |
18320026
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
丸谷 晃一 中部大学, 人文学部, 教授 (50279999)
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研究分担者 |
末木 恭彦 駒澤大学, 文学部, 教授 (60143335)
中田 喜万 中部大学, 人文学部, 教授 (50406873)
苅部 直 東京大学, 大学院・政治学研究科・法学部, 助教授 (00261941)
遠山 敦 三重大学, 人文学部, 教授 (70212066)
片岡 龍 東北大学, 文学研究科, 講師 (50400205)
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キーワード | 伊藤仁齋 / 伊藤東涯 / 論語古義 / 孟子古義 / 古義堂文庫 / 最上至極宇宙第一の書 / 林本 |
研究概要 |
伊藤仁齋は、荻生徂徠と並んで近世日本を代表する思想家である。この仁齋の諸資料は、天理大学付属天理図書館古義堂文庫に稿本を含めてほぼ完全な形で所蔵されている。こうした好条件に恵まれているにもかかわらず、伊藤仁齋の全集は、現在に至るまで刊行されてはいない。その全集未刊の最大の理由は、底本の確定の困難さにある。そこで本研究では、仁齋と東涯との諸資料を全面的に検討した結果、仁齋生前最後の稿本である林景范の筆写本(「林本」)が底本として最も適切であると判断した。そして、その刊行のための準備作業として仁齋の主要著作の「林本」を活字化する作業をほぼ完成させ、また仁齋の著作の訳注稿の一部を発表した。本年度はその活字化した『論語古義・林本』と稿本との比較を行い、その校正を行った。また将来この稿本を電子化するために天理図書館から『論語古義・林本』のカラー写真版を入手し、そのデジタル化に取り組み、完成させた。将来の稿本の保存と公開とを可能にしたと言える。 『林本』は上記のように仁齋生前最後の稿本であるが、その稿本にも改訂が加えられている。その改訂が仁齋の死後になされたものであるとする説と仁齋の手も混在しているという説とに分かれる。それは、朱と紺の二色の筆で改訂が加えられている。附箋は明らかに仁齋の弟子で『論語古義』の出版を手助けした辻生の東涯に対する意見で有ることは確定している。朱、紺の訂正はおおむね字句の訂正に留まるので、仁齋の死の時期などから勘案して、東涯が先ず字句の修正を行ったと見るのが妥当であると考えられる。 以上の観点からすれば、『林本』はあくまでも原文を底本とし、改訂は仁齋以外のものと言うことが出来る。
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