本研究課題は、日本においてこれまで部分的ないし皮相的にしか言及されることのなかった古典弁論術に関して、歴史的な側面と理論的な側面との二面から考察し、古典弁論術、とりわけ古代ロ-マの弁論術の形成とその後の西洋文化における発展について一定の俯瞰的な展望を与えることを目的とする。具体的には、以下の弁論術書を取り上げ、それぞれの理論的な側面を考察し、その上で相互の影響関係を考察する。古代ギリシアの弁論術書としてはプラトン『パイドロス』『ゴルギアス』、アリストテレス『弁論術』『詩学』、ヘレニズム期の弁論術書としては偽ロンギノス『崇高論』、古代ロ-マの弁論術書としては、キケロの『トピカ』『弁論家』『ブル-トゥス』、クインティリアヌス『弁論家の教育』、そして現代における弁論術書としては、ヤコブソン、ジュネット、ペレルマンなどの弁論術書である。また近現代の芸術における弁論術の影響も考察する。
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