研究概要 |
ラテン文学はギリシャ文学に比べて内容が直裁でないこともあり、日本ではまだまだ十全に研究されていない。とりわけ政治・思想・修辞学といった領域が及ぼしている影響の大きさが読解を難しくしている。研究3年度もまたそれをおぎなうべく研究会・読書会を中心に研究活動を行った。2度実施した研究会の1は、Douglas Cains(英国エディンバラ大学)がセミナ」形式でバッキュリデースの叙述形式について、もう1つは兼利琢也(早稲田大学非常勤講師)がセネカのいわゆる哲学的著作と「悲劇」の表現ならびに思考形式の類似性について知見を披露した。さらに従来から継続して行っているR.Syme,The Roman Revolutionに関する研究会を通算15回実施した(2008/4/18,5/9,5/30,6/20,7/11,8/1,9/12,10/3,10/24,11/14,12/5,2009/1/16,2/6,2/20,3/13)。同書はローマ史の必読文献であるにもかかわらず、癖のある文体のせいもあって我が国では必ずしも念入りによく読まれているとはいいがたい書物である。当然ながら同時代史料をSymeがどう処理しているかが問題となるが、それも逐一、原文にあたるようにした。さらに逸身は研究課題と大きなところで連関している単著を2冊、上梓した(下記11参照)。そのうち英国で発刊したPindaric Metre:The Other Halfは、古典文献学のありようについてのサーベイを含んでいる。発刊からまだ日が浅いので諸外国の研究者からの批評は、これから集まることが期待されるが、すでに資料収集と意見交換に訪れたドイツ・ライプツィヒ大学のKurt Sier ならびにMarcus Deufertからは有益な示唆を得ている。
|