研究概要 |
ラテン文学はギリシャ文学に比べて内容が直截でないこともあり、日本ではまだまだ十全に研究されていない。とりわけ政治・思想・修辞学といった領域が及ぼしている影響の大きさが読解を難しくしている。研究最終年度もまたそれをおぎなうべく研究会・読書会を中心に研究活動を行った。3度実施した研究会の1は、Malcolm Davies(英国オックスフォード大学)がセミナー形式でエウリーピデース『キュクロプス』について、さらに大芝芳弘(首都大学東京)がキケローの国家論の独自性について、そして近藤智彦(秋田大学)がヘレニズム哲学について知見を披露した。さらに従来から継続して行っているR.Syme, The Roman Revolutionに関する研究会を通算15回実施した(2009/4/24,5/15,6/12,7/3,7/31,8/14,9/11,10/2,10/23,11/13,12/25,2009/1/15,2/5,2/24,3/17)。同書はローマ史の必読文献であるにもかかわらず、癖のある文体のせいもあって我が国では必ずしも念入りによく読まれているとはいいがたい書物である。当然ながら同時代史料をSymeがどう処理しているかが問題となるが、それも逐一、原文にあたるようにした。さらに4年間の研究の集大成ともいうべき論文集を刊行した。体裁は私(逸身喜一郎)の退職記念論文集となっているけれども、その中には研究協力者10名全員(佐野好則・小池登・小池和子・大芝芳弘・納富信留・近藤智彦・神崎繁・桜井万里子・島田誠・片山英男_掲載順)の研究成果が発表されている。
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