本研究は、否定性(Negativitat)を文学が成立する原理的契機として捉え、この観点から、ドイツ近・現代文学の各時期の代表的もしくは特徴的な作品を手掛かりとして、それぞれの作品において〈否定性〉という契機の所在を突き止め、そのあり方と働きを明らかにしようとするものである。その際、(1) 「否定性」を文学そのものの原理的問題として捉えながらドイツ近・現代文学を全体的かつ個別的に考察し、(2) 神学的・哲学的思想と文学的思想を意識的に関係づけると同時に、認識の否定性と言語の否定性を連動している問題として検討し、(3) この理論的側面と実際的側面とを相互規定的もしくは相互修正的な関係において捉え、(4) 「否定性」のあり方と働きの連関を「我々の問題」として叙述することを目指す。
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