研究分担者 |
小林 昌博 鳥取大学, 大学教育総合センター, 講師 (50361150)
田中 愼 千葉大学, 外国語センター, 助教授 (50236593)
沼田 善子 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 助教授 (70189356)
吉田 光演 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (90182790)
吉本 啓 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (50282017)
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研究概要 |
初年度に当たるH18年度には、日本語関係では所有、数量詞、卓立などの現象について考察を深め、記述と形式化の両面で進捗を見た。形式化の中心になったのはダイナミック・シンタクス(DS)で、6月にはRuth Kempson教授を東北大C COE、東大COE合同のシンポジウムに招待し、実質的には当科研グループが発表、議論を重ねた。また、fMRI/EEGを用いた脳機能計測によって日本語の文処理過程計測実験も行い、脳科学との接点も探った。とくに、DSによって日本語文のインクリメンタルな処理を包括的に定式化するための基本的検討を行い、前者の実験結果を後者の理論によって解釈・モデル化するための方法の端緒も開いた。実装の面でも、Prologを用いてDSの基本的な処理の実装を行った。具体的には、DSでは語彙規則や推移規則の適用に関するアルゴリズムが未だ明確に確立されていないため、その形式化を行った。また、計算機上での日本語の統語及び意味解析を行っている。 これに対してドイツ語に関しては、COEシンポジウムにおいてKempson教授を交えてDSによるドイツ語の扱いについて議論を深めた。次年度以降には、DSによる理論化と日本語と対比しながらの実装を開始できると考えている。さらに、変形生成文法と認知言語学の間に新たな立場を築くという当プロジェクトの目標に即して、両方法論を媒介としながら名詞意味論、動詞意味論を実用論的なレベルで融合させる試みを続けている。前者は情報構造の研究、後者はアスペクト・テンス・モダリティ(ATM)の研究に収敏してきた。これらの点について日本言語学会、日本認知言語学会などの発表、ワークショップを行い、成果を公表してきた。視点研究、コンテクスト研究も視野に入れた我々のプロジェクトでは、日本語の数詞・類別詞とドイツ語の対応表現を対照し,日本語の類別詞が数範疇を担っていること,ドイツ語の類別詞と日本語の類別詞の間に類似性があることを明らかにしたり、照応と直示という2つの指示のプロセスに着目し,ドイツ語,日本語について,この指示プロセスの違いがそれぞれの言語の文法構造(人称システム,主語構造,主題構造,アスペクト,時制,モダリティなど)およびテクスト構造,語彙体系などの現れていることを示したりと、「モダリティと指示」の問題が研究の焦点として浮かび上がってきた。 なお昨年度中に、研究分担者沼田善子の「現代日本語取立て詞の研究」が筑波大学に、研究協力者稲葉治朗の"Die Syntax der Satzkomplementierung : Zur Struktur des Nachfeldes im Deutschen"がフランクフルト大学に博士論文として提出、受理された。また荻原俊幸、Chungmin Lee, Sebastian Lobnerを招待し、研究協力を発展させた。
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