研究概要 |
南琉球方言は,与那国方言を中心に調査をした。その結果,80歳台の話者でも,平山輝男・中本正智(1964)『琉球与那国方言の研究』(東京堂)から変化が生じていることが分かった。3拍語で言えば,以前は,1.○[○○,2.○[○○]],3.○○○_であったものが,2番目の型の末尾の拍内下降が消えて1番目と同じ○[○○になり,3番目はしばしば語頭が少し高まって発音されるようになっている。1番目の○[○○と2番目の○[○○は,助詞も同じく高くついてその範囲では区別がないが,その後に自立語を付けると高くつくか低く付くかの区別が現われる。助詞なしで自立語を続けても同じ区別が現われる。また,3型アクセントに納まらないように見える音調型も一部記録してあるので,アクセント体系については今後さらに調査をして行く。その他,宮古島方言,波照間島方言でも簡単な予備調査を行なった。 奄美の沖永良部島方言では,和泊町皆川で地元の人が書いた方言集,甲東哲『島のことば 沖永良部島』を使ってその全語彙のアクセントを調べていたが,今期で全部の調査を終えた。そして,すべてのデータを入力して,アクセントの型別に整理をし,資料集の形で3編を公刊した。2拍語までを発表したので,3拍語以降は次期に行なう。 沖縄本島に関しては,内間直仁・野原三義(2006)『沖縄語辞典--那覇方言を中心に--』(研究社出版)の各項目のアクセント表記をパソコンで入力し,その電子化を進めた。まだしばらくかかるが,電子化完了後に整理分析をし,さらに著者に確認調査を行なって,那覇方言アクセントを解明したいと考えている。 日本語のアクセント史を考える上で重要な方言である香川県伊吹島方言は,以前に行なった世代別調査を国際会議で発表し,英文論文として公刊した。
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