研究概要 |
1南琉球方言では,予定通り与那国島方言のアクセントを対象に,特に動詞の活用形約1000項目のアクセントを記述した。また,付属語や平山輝男・中本正智(1964)『琉球与那国方言の研究』(東京堂)の所収語彙約1000語についても確認調査を行なった。その結果,平山・中本報告との間の40年の間に次の変化が起こっていることが明らかになった(主要なもののみ)。(1)3型アクセントのA型とB型の対立が単独形では失われている。これはアクセント単位末(助詞付きを含む)の下降調が消失したことによって生じた。(2)しかしながら,その直後に別のアクセント単位が続くと,B型は次を下げる特徴をもち,それのないA型との対立は保持されている。(3)A型とB型の対立は,軽音節終わりの付属語が続いても区別されないが,最後に重音節を含む付属語が付いた場合には保たれる。「橋」と「箸」で示す。橋ha[Cji ha[Cjinga ha[Cji minu]N(〜ない)ha[Cjinga minu]N ha[CjibagiN(〜も,まで)箸ha[Cji ha[Cjinga ha[Cji] minu]N ha[Cjinga]minu]N ha[Cjibagi]Nこのような形で音節の軽重がアクセント変化に関与している方言は,私の知るかぎり,日本語では初めてである。この成果は,イギリスのLeedsで開かれる国際会議(Methods)において英語で発表をした。 2奄美の沖永良部島和泊町皆州方言のアクセントについては,音節構造別に整理した資料集を複数発表した。 3同じく奄美の徳之島浅間方言では,修飾構造に現われる半下降について調べた。これも目本語の中では初めて明らかになった現象である。 4本土方言では,青森市方言後部2拍複合名詞のアクセント資料を公刊した。来年度で完成の予定である。
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