研究概要 |
本研究は, ウェブ上に学習支援システムを構築し, 日本語を母語としない学習者に, 自力では入手しにくいが日本語使用に億不可欠な, 語用論的知識および社会文化的情報を踏まえた日本語学習教材を提供することを目的としている。通常, 教材には提示されない否定的な語用論的転移である「不適切な実現例」も用意しながら, 映像利用と読解によるインプット活動とコミュニケーション教材によるアウトプット活動を展開する, オンラインとオフラインの2つのモードを組み合わせるなど, ダイナミックな日本語学習支援システムの構築を目指すものである。 平成20年度は, 18・19年度に作成した映像利用のコースウェア(IT技術者(=SE)のための遠隔日本語学習システム)を中心に, 多元・多層にわたる日本語学習活動を支えるシステムを拡充するため, まずは, 19年度に作成した「不適切な対応事例」を含んだコースウェアについて, 学習者がどのように評価するかについて, 試用とその評価を行った。その結果を踏まえ, さらに広い範囲の学習者の利用を可能にするため, 中国語訳の導入も行った。さらに, 日韓の対照語用論分析により, 不適切な例のバラエティを増やすための, 文献調査とデータ収集を行った。 コースウェアは全般的な評価の結果は良好であったが, 学習者の性別とIT技術の度合いが, 評価結果に影響を与えることが判明した。また, 個別の聞き取り調査からは, コースウェアへの背景音楽の導入を求める声が少なくないことや, 学習者の文化背景によって, 画面デザインにおける色の好みなどが大きく異なることなどがわかり, 一様の呈示で多様なレベル・文化背景の学習者を引き付けることは難しそうであることがわかった。
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