本研究の目的は、多言語版日本語辞書編集システムの構築と世界各国の日本語教育者・研究者との共同作業による各言語版日本語辞書の編集およびその評価にある。本研究の対象である辞書編集システムは、インターネットを介して各教育者が個別に行う各言語版辞書の編集をSQLサーバで一元的に管理するものである。各国の辞書編集者による運用実験を経て、インターネット上で自由に編集作業が行える多言版日本語辞書編集システムが完成した。現在このシステムを利用して、21言語による日本語辞書編集が開始されている。本システムを利用して辞書の編集作業を行った場合、情報はすべて一元管理され、編集が完了した単語は自動的にWeb辞書としてインターネット上で公開(http://chuta.jp)される仕組みになっている。そのため、辞書編集者が自らの成果をその場で確認できるばかりでなく、世界各国の学習者にも利用可能となる。また、一定の辞書情報が集まった言語から逐次辞書ツールに組み入れている。本研究期間において日-スロヴェニア語辞書ツールおよび日-スペイン語辞書ツールが完成し、公開を開始した(http://language.tiu.ac.jp)。本システムの運用実験によって、多言語環境における辞書情報の管理、さらに教材の共有化の問題点等が明らかになり、適宜システムの改良を行うと共に、辞書情報についても編集・修正作業を継続的に行っている。本研究によって、日本語辞書作成者と世界の各国語版日本語辞書編集者との相互連携による辞書編集が可能になった。また、本研究の成果は、多言語環境における共同編集、教材共有化等、IT社会における教育関係者間の新しい連携のあり方を示している。
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