研究課題
本研究は、歴史学・民俗学・民具学・水産学の研究分野を異にする研究者が共同し、漁業・漁民・漁村の総合的研究を行い、日本人の伝統文化の特質を海からの視座から解明せんとするものである。2007年度は、研究会二回と、地域調査を実施した。研究会では、第一回目に昨年度の調査報告と、今年度の調査地について話し合った。第二回目には、成城大学小島孝夫氏の神島をめぐる離島調査報告、および分担者各自の中間報告を行った。地域調査は、昨年度から継続して、黒潮の流れに沿う太平洋沿岸地域、なかでも伊勢湾周辺と、西伊豆を中心とする駿河湾沿岸漁村の二ヶ所に焦点をしぼり、それぞれ、歴史学・民俗学・水産学・民具学の立場から実施した。伊勢湾周辺では、神島・答志嶋などの離島調査と、志摩半島の漁村調査に焦点を絞り、現地での聞き取り調査及び鳥羽市海の博物館が所蔵する古文書調査を重点的に実施した。駿河湾周辺では、西伊豆町の史料調査と、焼津市の史料調査を重点的に実施した。あわせて、国文学研究資料館・徳川林政史研究所などにおいて関連史資料を調査・収集した。昨年度・本年度の史料調査によって、それぞれの地域における史資料の存在状況、および漁業・漁民・漁村の実態を歴史的に明かにするための準備が整いつつあるといえる。本研究の意義は、近代以降とくに戦後の環境変化・公害問題の中での漁村の急激な変化および衰退・消滅、地球規模で問題化しつつある資源問題の中での漁業・漁民の位置など、現代がかかえる動向や諸問題をふまえた上で、日本の近代化の過程でもっとも大きく変化した沿岸部の集落の実態と特質を、歴史学・民俗学・民具学・水産学など諸学が協力し、それぞれが対象とする史資料の内部に立ち入って検討し、歴史的に明らかにしていくところにある。次年度以降も継続して取り組んでいく。
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青山史学 26
ページ: 109-137
愛知淑徳大学論集 13(印刷中)
ムラの資源を研究する
ページ: 74-84