2006年8月から9月にかけて、山田(研究代表者)と柴田(研究協力者)が、40〜50日間、シリア、ダマスカス博物館およびテル・タバン(ハッサケ)において、テル・タバン出土文書の調査解読をおこなった。研究補助者として大学院生2名(有賀望、伊藤早苗)が同行した。 ダマスカス博物館においては、2005年に出土した、中期アッシリア時代文書(推定150点)と古バビロニア時代文書(10点)のうち、クリーニングの済んだ粘土板文書に整理番号をつけて記録する作業を行った後、断片の接合、ハンドコピーの作成と解読作業を行った。 テル・タバンにおいては、新たに15点の古バビロニア時代粘土板文書と27点の中期アッシリア時代文書(建築記念埋蔵碑文)が出土し、これらの文書の解読とハンドコピーの作成を行った。古バビロニア時代の粘土板文書(不動産下賜文書、行政文書、書簡)の解読、分析から、これら粘土板の年代は前18世紀後半であり、当該地域に対するバビロンのハンムラビの支配が終わった後まもなく、テル・タバン(古代名タバトゥ)は、南方のテルカの王の支配下に置かれていたことを示唆する証拠が得られた。中期アッシリア時代の建築記念埋蔵碑文のなかには、煉瓦に新たな王名(前11世紀)が確認され、これまでに知られていた中期アッシリア時代の王名とあわせ、王統の再構成が行われたほか、新たな円筒碑文断片から前11世紀に侵入するアラム人に対する防備のための建設事業が行われたことを示唆するデータが得られた。 こうした、新たな文書資料は、研究中の大量の中期アッシリア時代粘土板文書と内容的に深く関わるものであり、今後これらを並行して研究解読することとし、研究計画の見直しを行った。
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