2005年以来2009年現在に至るまでにシリア北東部ハッサケ州テル・タバン遺跡の発掘調査(責任者 : 沼本宏俊[国士舘大学])により、多数の楔形文字文書が発見されていている。これらは紀元前18世紀ならびに紀元前13世紀後半から前11世紀初頭にかけての行政文書(受領書、契約文書、書簡)ならびに建築記念碑文であり、当該の時代におけるテル・タバン周辺地域の歴史と文化ならびにそのシリア・メソポタミア各地との関係について、新たな情報を提供する。本研究の目的は、日本隊によって発見され海外においても高い注目を集めるこの楔形文字文書群の解読と体系的研究である。具体的には2006年度からの4年間に、2005年以降の出土文書史料を整理し、それらの筆写、音訳、翻訳、および文献学的注釈を準備し、さらに新たに出土する文字資料の解読と整理を行い、それらの成果に立って、史料に文献学的、歴史学的考察を加えることを目的とする。
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