研究課題/領域番号 |
18320123
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
栗原 麻子 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00289125)
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研究分担者 |
桑山 由文 京都女子大学, 文学部, 准教授 (60343266)
井上 文則 筑波大学, 人文科学社会科学研究科, 講師 (20400608)
小林 功 富山大学, 人文学部, 准教授 (40313580)
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キーワード | 西洋史 / 西洋古典 |
研究概要 |
各人が文献・資料の収集に引き続きつとめるとともに、計5回の研究会をおこなった。そのうち12月には、筑波大学の内山田康氏による、文化人類学における儀礼研究についてのレクチャーを受け、1月には、中世ヨーロッパにおける儀礼研究に先鞭をつけられた東京大学の甚野尚志氏による講演会をおこなった。また夏には、十分な前もっての検討会を経て、実地調査のためシチリア、ローマ、アテナイを訪れ、それぞれ関係遺跡の調査にあたった。たとえば研究協力者の山内暁子はアスクレピオスの祭儀に焦点を定め研究を継続した。桑山はローマ市内を中心に、トポグラフィカルな実地踏査をおこなった。栗原は、アテナイ郊外の軍事遺跡と、ネメシア(復讐の女神)の神殿を訪れ、復讐と和解の儀礼について、帰国後論文の公表のために準備を進めた。また、それらと平行して、研究会の一環としておこなった18年度のレヴィック博士講演会の発表原稿を中尾恭三が公刊するとともに、山内と栗原はパーカー『アテナイ社会と多神教』の翻訳を進めた。井上は、ミトラについて検討した結果、今回の科研での検討は断念し、後期ローマ帝国の皇帝による、小アジア宗教政策に課題を変更して周辺的な事実確認にあたった。桑山はパンヘレニオンの祭儀に焦点を定めることで、低国史研究と都市史研究の接点を探った。小林は引き続き皇帝の結婚儀礼をはじめとする宮廷儀礼の検討をおこなった。 今年度の研究の結果として明らかになりつつ有るのは、研究者の個人的資質を超えたところに、ギリシア、ローマ、ビザンツ史のあいだで、厳然として「儀礼」をめぐる研究状況の差がみられることである。ローマ史における儀礼研究が、政治的リーダーの宗教政策として語られ、都市共同体を前提としないのに対して、ギリシア史の場合には、むしろ都市の共同体性が強調される。ひとつの共同研究として成果をあげようとする場合にはこれらを解決せねばならない。研究会としては、最終年度に公開討論会をもつ予定であり、そのため1月には、すり合わせを模索し、統一的なテーマ設定にあたった。
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