研究課題/領域番号 |
18320123
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
栗原 麻子 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00289125)
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研究分担者 |
桑山 由文 京都女子大学, 文学部, 准教授 (60343266)
井上 文則 筑波大学, 人文社会科学研究科, 講師 (20400608)
小林 功 立命館大学, 文学部, 准教授 (40313580)
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キーワード | ギリシア / ローマ / ビザンツ / 儀礼 / 都市共同体 |
研究概要 |
最終年度である2008年度には、各研究分担者および研究協力者による個別発表をシンポジウムのかたちにまとめるために、4回の研究会をおこなった。3年間の共同研究の結果、問題点として明らかになったのは、儀礼を論じる際の枠組みが、ローマ側のメンバーと、ギリシア側のメンバーのあいだでずれていることである。すなわち、ギリシア側の研究は、都市共同体を単位として、その内部あるいは、都市間のネットワークを論じる傾向にあるのに対し、ローマ側のメンバーの関心は、国家・帝国を場としがちであった。井上報告は、儀礼と帝国を安易に結びつける議論の危うさに警告を発している。しかしながら、メンバーの議論のずれは、該当社会がおかれた政治体制の差だけではなく、研究者としての関心のよりどころにも由来している。そのギャップを埋めることは十分可能である。ギリシア側の研究についていうならば、研究協力者である山内暁子と中尾恭三が、祭儀をポリスをこえたネットワークの中で儀礼をとらえる必要性と、ポリスの個別性を共に指摘するにいたった。また、近年の小アジア各地における碑文研究は、ローマ帝国を論じる際にも都市共同体レヴェルでからの考察が必要であることを示している。本共同研究においても、桑山報告が、都市アテナイに焦点をあて、帝国エリートと都市国家エリートの関係性について論じている。栗原報告がデーモス(民衆)を和解のための国家儀礼の主役として描いたのにたいして、小林報告は、デーモスが儀礼においても形骸化していくコンスタンチノープルの状況を描いた。このような視点の歩み寄りは、本共同研究の土壌でもあり、また成果でもあったといえる。今後も、儀礼の場である結社により対象をしぼって共同研究を継続するほか、シンポジウムの成果を、発展的に雑誌特集号として公刊の予定である。また、本共同研究の一環としてR. Parker, Polytheism and Society at Athens(Oxford, 2004)の翻訳作業を継続中である。
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