平成20年度の調査研究の目標は、平成18年度の金山の分布調査の結果選定された5つ(東1・東2・北1・西・南)の発掘調査地点のうち東2と北1の2地点の発掘調査を行い、各地点の石器製造に関して、その時代的変遷を跡づける層位データを収集することに求められた。 東2地点に2m四方の発掘調査区を設けた。調査地点は急傾斜を呈しており、調査深度は上方端部で2m、下方端部で1mに至った。地層は地表から第5層まで6層に分かれたが、第4層まではサヌカイト原石、石核、剥片、石器半製品等のサヌカイトで形成される石群の層で、山の傾斜に従いながらも、傾斜面上の通常の堆積と異なって、上方に厚く、下方に薄い堆積をみせる。ところが最下層の第5層は土を主体とする地層で、そこに上層の石群層と同じ構成のサヌカイトと土器片が含まれるが、堆積は山の傾斜に逆行する。この変則的な層の堆積状況は、金山の急斜面に対し、緩やかに斜め下方にオープンカットされた跡への堆積を想定すると理解しやすい。発掘調査地点は、サヌカイト採掘坑の中に位置していることになる。金山での最初の採掘坑の検出である。その時期は、調査は坑の床に達していないので確定はできないが、出土遺物から弥生時代の可能性が高い。 北1地点に2m四方の発掘調査区を設けた。50cmの深度まで地表から第2層までの3層に分かれたが転石ではない大きなサヌカイト原石群が検出された。石器石材生産地点と密接に係る原石分布状態を示す重要なデータである。 東2地点、北1地点のサヌカイト原石、山頂南部の原石、山頂南西下方サヌカイト露頭の蛍光X線分析を行った。1年度から3年度までの分析で、金山サヌカイトは西・北群と東・南群に2分される可能性が高くなった。この結果を消費地の金山サヌカイトで検証すると、石材生産・流通集団の展開を跡付けられる。
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