研究課題
今年度も資料を収集する一方、分析に力点をおいて研究を進めた。本年度は高知市朝倉古墳を調査した。本古墳は7世紀前半に位置付けられることが判明し、この古墳が瀬戸内の強い影響を受けていることが明らかとなっている。6世紀後半から7世紀初頭まで南四国では細長い玄室を持つ畿内系石室が太平洋沿岸に点的に分布することが、これまでの研究で明らかになっている。このことから6世紀後半には太平洋沿岸域の交流が盛んだったと考えられるが、朝倉古墳の調査成果を敷衛すると、7世紀前半に南四国は瀬戸内重視傾向に変化すると考えられる。横穴式石室以外にも、青銅器・土器・石器等のあり方から、東西の文物交流は瀬戸内でありながらも、断続的に太平洋沿岸交流が重視されたことが浮き彫りになりつつある。弥生時代初頭に太平洋に面した拠点集落・田村遺跡が展開されるが、その後太平洋を通じた展開は弥生時代後期まで認められない。弥生時代後期に大型青銅器が南四国に分布するが前期古墳は存在しない、等の現象である。こうした時々の太平洋沿岸交流重視の背景に迫るべく、南四国の大型青銅器と前期古墳の分布・装飾付大刀・七星剣についても分析を進めている。また、太平洋沿岸域の交流の特質を明らかにするため瀬戸内ルートとの比較研究を進めた。また、四国以外での東海〜東北における文物交流についても視野を広げて研究を進めている。
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熊本大学文学部考古学研究室『考古学研究室報告』 第44集
ページ: 1-28
高知大学考古学調査研究報告 第5冊
ページ: 1-48
弥生時代の考古学2 儀礼と権力
ページ: 112-126