古代の銅鏡製作製作技術を解明するためのもっとも重要な資料として、鏡箔がある。残念ながら鏡箔の発見例は少なく、出十資料としてもごくわずかである。しかし、まとまった数量が知られる鏡箔としては、草葉文鏡笵(前漢時代)、山字文鏡笵(戦国時代)、日本列島の弥生時代石製鏡笵、中国東北部から韓半島にかけて出十する多鈕鏡笵などがあげられる。今回の研究では、中国、韓半島、日本列島の鏡笵を調査し、それを元に各鏡式の製作技術を明らかにする。鏡箔とともに各鏡式の銅鏡も調査し、鏡笵から得られた製作技術の情報をより確かなものとする。そして想定した製作技術を元に銅鏡の鏡笵を復元し、鋳造実験を行う。東アジア全般の鋳造技術を概観するのは、短期間では到底できないが、銅鏡の製作技術は、熱処理技術をはじめ多種多様な技術が用いられており、いわば各時代、各地域の鋳造技術の系譜を概観し、その系譜関係を理解するに当たって良い試金石となる。
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