研究概要 |
3年の研究期間の最終年である平成20年度は,各研究者が昨年度の研究の上にさらに新たな研究を積み重ねた。中川,高橋はラオス農村地域の調査村において,国際人口移動に関するさらなる聞き取り調査を行うとともに,GISを用いて村の詳細地図を作成した。渡辺,早瀬(研究協力者)はタイ北部,川端,佐藤はタイ東北部,伊藤(研究協力者)はバンコクにおいてさらに調査を重ね,それぞれタイにおける外国人,タイ農村地域における商業の新しい展開,タイ農村地域の土地利用,バンコクの専業主婦に関しての研究を行った。一方,中川はタイの研究協力者,コンケン大学のセクソン教授とともに,タイからドイツへの国際結婚移動に関する研究を整理して,平成20年度人文地理学会にて報告をおこなった。 今年度の成果は以下に整理できる。タイ,ラオスの農村地域といった途上国周辺地域においても,グローバル化のもとで,2000年ころ以降に人の動きに大きな変化が生じていることが明らかになってきた。ラオスの村の場合,村への電気供給の開始に伴うテレビ普及とタイの情報の流入,タイ政府の外国人労働者政策の変化のなかでタイへの出稼ぎが急増した。タイの農村部では日本をはじめとする先進諸国の外国人労働者受け入れ政策の変化(取り締まりの強化)のなかで,目的国でのより安定した滞在が期待できる国際結婚による海外への移動が増加していることが明らかになった。国際結婚はタイ国内の結婚規範の変化のなかでの位置づけも可能であるが,国際労働移動の一形態との見方がより重要であると指摘することができる。
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