研究課題
18年度は、5回の研究会とネパール、中国、ベトナム、ラオス、モンゴル、インドネシアでの調査を行った。5回の研究会では、睡眠についての医学・生理学的、また文化人類学的な研究と、中国の出産制度の変化について、専門家の講演を依頼した。海外調査では、2つのことを行う計画をしていた。一つは、妊娠・出産・育児に関する質問紙を各国の言語に翻訳し、それを100名の産後の女性に依頼することである。もう一つは、アクティグラフを用いて、産後1ヶ月目の女性の睡眠パターンを測ることである。分担研究者がそれぞれの国を受け持ち、現地の研究協力者(あるいは調査助手)の援助を得て、質問紙調査とアクティグラフによる睡眠調査の両方を行った。ベトナム、モンゴルでは質問紙調査を終了し、中国、インドネシアでは現在進行中である。ラオス、ネパールは次年度に質問紙調査を行う。アクティグラフについては、ネパールとベトナムでは数名のデータがとれたが、他の国では次年度に行う予定である。質問紙調査をする過程で明らかになったことは、質問紙を翻訳する段階で、文化による違いを質問紙の中に反映させざるを得ないことである。たとえば、産後の手伝いをするのが実母か夫の母親か、産後は夫が別室で眠るのか母子と同じ部屋で眠るのか、また育児に適した住宅かどうかを質問する際には、モンゴルのゲル、ベトナムの舟の項目を加える必要があり、高層マンションに対する認識は日本と中国では逆であった。また、中国、ベトナムでは都会の大病院の帝王切開率は非常に高くなっており、それは農村での自然な出産と対照的であった。社会の近代化が出産の医療化を引き起こすことは、どの社会でも共通しているが、モンゴルや日本ではそれほどの帝王切開率の上昇をもたらしていない。近代化が帝王切開率の極端な上昇をもたらす国とそうでない国の違いが、助産師という職業の位置づけにあるのではないかという仮説を、次年度以降に検証する必要がある。
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すべて 雑誌論文 (3件)
家族の変容とジェンダー-少子高齢化とグローバル化の中で 日本評論社
ページ: 219-237
鹿児島県母性衛生学会 11号
ページ: 6-9
九州人類学会報 33号
ページ: 13-20