研究課題/領域番号 |
18330003
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
大江 泰一郎 静岡大学, 法務研究科, 教授 (00097221)
|
研究分担者 |
藤本 亮 静岡大学, 法務研究科, 教授 (80300474)
伊藤 博史 静岡大学, 法務研究科, 教授 (60402236)
古口 章 静岡大学, 法務研究科, 教授 (70402237)
田辺 肇 静岡大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (60302361)
橋本 剛 静岡大学, 人文学部, 准教授 (60329878)
|
キーワード | 基礎法学 / コミュニケーション / 法文化 / リーガルカウンセリング / 法情報 |
研究概要 |
模擬カウンセリングテキストと法律相談テキストとの形態素分析をベースとした量的ならびに質的な会話分析を行った。弁護士の方が、カウンセラーよりも発話数も、また発言ごとの文数も多かったが、文節数についてはそれほど違いはなかった。「だめ」「できない」「わからない」といった否定的表現に着目すると、カウンセラーは相談者より少なく、弁護士は相談者より多いこともわかった。このように形態素分析をベースとした会話分析という方法は、カウンセリングや法律相談というある程度定型的な会話体においても有用であるということが明らかとなった。さらに、クライアントや相談者の当該のカウンセリング・法律相談に対する評価を組合せると、望ましいカウンセリング・相談の技法を同定することができるという研究の方向性が確認された。 静岡県在住者対象にウェブ調査を用いて、もめごと経験とそれについての相談行動を尋ね、300ケースを回収した。おそらくウェブ調査モニタの特性および質問文における用語を主たる理由として、「もめごと」の経験率は約4分の3と同種の調査よりもたいへん高く出ている。従来の紛争調査や裁判利用調査では、紛争の分類として、裁判上の分類(事件名)を援用することが多いが、社会学的な視点からは、紛争をその相手当事者によって分類していく方が日常的な直感的分類に近くなるのではないかというさらなる仮説を構成することもできるだろう。こうしたもめ事に直面しても誰にも相談していない者が約45%いた。弁護士に相談したケースは無料・有料合わせて20件であり、そのうち依頼したものは7件であった。しかし、依頼したうちの5件程度が家族離婚や相続にかかわるものであり、逆に自己は66件のもめごと経験数のうち弁護士に依頼したのは0件であった。このように弁護士が受任する事件にははっきりとした傾向がみてとれる。もめごとは広範に存在している。それが必ずしも法的紛争の「種」であるとはいいきれないものの少なくないもめごとが「放置」されていることも本調査からはあきらかになった。
|