研究課題
この研究は、今年度を初年度とし、3年目に成果をまとめる予定で行っている。初年度の今年は、日中英仏独の5ヵ国が、直接に交渉をもち、それぞれの「近代法」を交錯させる19世紀において、「調停」はそれぞれの国でどのように構想されたのかという点に力点を置いた。つまり、最終目標である「比較」を前提としつつも、各国近代史において「調停」なるものがいかなる歴史的系譜の上に存在したのかを、まずは洗い出してみるという作業を行った。夏期には、それぞれが研究課題を定めて各国調査を行い、この結果を10月の研究会合宿で報告しあった。このような中で、日本に特徴的に見られる、職業裁判官による調停という点を重視して、明治期勧解と大正期から昭和期に見られる各種調停法-特に金銭債務臨時調停法の問題が取り上げられた。また、ドイツの素人調停者によるSchiedsmann制度とともに、営業裁判所の活動にも光が当てられ、知見が広まった。フランスでは、juge de paix の出現-特にアンシャンレジーム下の各種裁判所と異なるフランス革命の所産たる「調停」の意義について話し合い、イギリスについては、治安判事の問題だけでなく、金銭債務紛争との関連で出現した「調停」機構などが新たに発見された。これらのことを3月に行った2回目の合宿でさらに検討し、来年度の予定を前半は、問題発掘、後半を比較の視座の構築というように結論づけた。