研究概要 |
3年間の研究予定期間の初年度である平成18年度は,当初の計画では,犯罪被害者の刑事手続への参加に関わる現在の議論を整理し,想定される様々な参加制度について,それを導入した場合に,既存の制度との関係で生じる問題点と,それをふまえたうえでの詳細な立法課題を抽出することを目的としていた。そして,そのためには,抽象的な理論的検討を行うよりも,諸外国の制度をまず調査,検討することが,より具体的なイメージのもとで検討を行いうるという意味で,上記の目的達成のために有用であると考えられた。そのため,本年度は,まず,各国において,(1)いかなる形態での参加が認められており,その歴史的経緯はどうであったのか,(2)それは,刑事手続の構造とどのような関係にあるのか,(3)被害者の刑事手続への参加は,刑事手続にどのような影響を及ぼし,いかなる問題を生じさせているのか,という点を中心に,諸外国の制度と議論状況を,関連する文献を入手したうえで調査・検討する作業を行った。具体的に調査対象としたのは,アメリカ,イギリス,ドイツ,フランスの各国である。 一方で,この間に,法制審議会に対する諮問を受けて,法制審議会刑事法部会において,犯罪被害者の刑事手続への参加制度を含む検討が開始され,この部会には,本研究の研究分担者のうち,佐伯,酒巻,大澤,川出の4名が,委員・幹事として参加した。そこで,刑事法部会での議論と並行するかたちで,研究会を開催し,被害者の参加制度の当否とその内容に関する検討を行った。その後,本年3月には,法制審議会の答申を受けて,国会に「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が提出されたため,その検討対象を法案に切り替えて,その内容の検討を継続した。主たる検討内容は,本法案で導入された「被害者参加制度」につき,諸外国の制度と比較しつつ,その内容と問題点を明らかにすることであった。 研究の結果は,本年5月の日本刑法学会の大会で共同研究のかたちで報告するとともに,順次,雑誌論文として公刊する予定である。
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