フランス民事訴訟法典のうち、今年度は特に以下の部分に集中して逐条検討を行った。 1 身分関係訴訟の特則 前年度に引き続きの検討となったが、フランスの民法典が大幅に改正され、これに対応する民事訴訟法の規定も2008年末に改正されたため、従前の検討結果を大幅に見直すこととなった。 これにより、我が国の家事審判に相当するフランスの訴訟制度について、最新事情をとりまとめることができた。 2 フランスの訴訟制度における迅速性の重視傾向 ソラヤ・メキ教授を迎えての研究会では、フランスにおける民事訴訟実務が改革の最中にあること、とりわけ訴訟の迅速化を目標とする数次の改革により、その訴訟実務が大きく変わっていく可能性があることが明らかとなった。 ただし、この改革方向には実体的適正との関係で問題が生じるおそれが否定できず、その留意点をメキ教授が報告された。日本における裁判の迅速化にも共通する問題があり、日本とフランスとの民事訴訟比較研究に有用な寄与となった。 3 占有訴訟・配当手続 占有訴訟および配当手続についても、フランス革命以来の立法に近時の大改正が加えられており、その逐条的な検討を行った。にはフランスの不動産執行手続の全面改正が前提となった改正であり、翌年度も引き続き、不動産執行手続の検討も踏まえて再検討を加えていく必要がある。
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