研究概要 |
本年はこの研究プロジェクトの最終年であり、帰納的ゲーム理論と限定合理性に関しての基礎的研究を進展させた。研究代表者は国外研究協力者のJeffrey J. Kline氏との共同論文:Partial Memories, Inductively Derived Views, and their Interactions with Behavior, May 2008,SSM.DP.No.1207を完成した。この論文では、特に、限定的な認識能力のもとで、経験からいかに個人の社会観を形成するかを考察した。この限定性は経験にも依存するし、また、心的な特徴、とくに、記憶の形成・働きに密接に関連する。このような限定性を導入すると、社会状況の構造の全体などは経験からは学習できないことが証明される。 また、研究代表者はExploring New Socio-Economic Thoughts in small and narrow Earth, December 2008, SSM.DP.No.1223を完成させた。この論文ではこれからの世界がどのようにあるべきかを論じた。本論文は本プロジェクトが属する大目標の思想的スケッチであり、本プロジェクトの位置づけも議論してある。 本プロジェクトの重要な点は、「限定合理性」の多くの異なる側面が現われる。「限定合理的」プレイヤーは、あまりに複雑な社会観は導出できない。もし導出した社会観が複雑すぎれば、意思決定が難しくなる。このように、多くの場面で「限定合理性」が関係してくる。これらのステップを「限定合理性」を考慮しながら総合的に研究するのが、このプロジェクトの特徴である。これらを基礎にして、「社会的役割」と「他人の心」を帰納的ゲーム理論の観点から研究・分析することが可能になり、これによって、世界のあり方・個人のあり方などを研究することが可能になった。
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