研究課題
平成20年度は、衡平性と効率性の観点から重複世代経済における世代間資源配分の評価基準に関する包括的な分析を行うことを目的として研究を実施し、以下のような成果を挙げた。1. 衡平性と効率性の原理を結合した基準によって意思決定を行う方法を選択関数のフレームワークで定式化し、無羨望性または平等等価性を衡平性の基準として採用したときに、選択の合理性の諸条件と両立するか否かを、様々なケースに分けて解明した。2. シジウイックの世代間衡平性の要請-誕生の時点だけで人々を差別的に扱うことは不衡平であるという主張-と、異時点間の資源配分の効率性および社会的評価順序の連続性を同時に満たす無限効用流列の評価順序が存在しないというダイアモンドの定理を拡張した。すなわち、シジウィックの原理の代わりにピグー・ドールトンの移転原理-相対的に裕福な者から貧しい者への移転は社会状態の改善であるという主張-に基づく衡平性を定式化し、この条件と弱い連続性の条件および合理性の条件を同時に満足するような無限効用流列の評価順序が存在しないことを証明した。3. 利他的な選好関係を表現する効用関数の形式には「家父長的表現形式」と「非家父長的な形式」があるが、世代間の効用の相互依存という文脈で、非家父長的な形式の効用関数を家父長的表現形式に書き換えることが可能か否かという、レイによって1987年に提起され、未解決であった重要な問題に対して、タルスキーの不動点定理を援用することによって肯定的な解答を与えた。連携研究者:早稲田大学政治経済学術院教授 鈴村興太郎、筑波大学大学院人文社会科学研究科教授 篠塚友一
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (1件)
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