研究課題/領域番号 |
18330038
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
姫野 順一 長崎大学, 環境科学部, 教授 (00117227)
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研究分担者 |
堂目 卓生 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (70202207)
若田部 昌澄 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00240440)
熊谷 次郎 桃山学院大学, 経済学部, 教授 (30047972)
深貝 保則 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (00165242)
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キーワード | ブリテン帝国 / アメリカ経済思想 / レーダーシップ / 帝国デザイン / 植民地帝国 / 立憲主義 / ナショナリズム / 新自由主義 |
研究概要 |
本プロジェクトはイギリスからの招へい研究者とのワークショップを交えて、以下のような研究実績が得られた。 ブリテンにおいては重商主義帝国の形成が国民的アイデンティティや国民国家形成と軌を一にして進んだというのが、この研究プロジェクトにおける問題意識であるが、その観点から、17世紀末おけるいわゆる「キャラコ論争」を毛織物市場保護と国内市場の形成の観点ではなく、植民地帝国の形成視点から再検討した。また18世紀末尾以降のアイルランドにおいて一旦はアイリッシュ・ナショナリズムの昂揚を迎えたものの頓挫し、19世紀初頭にはブリテンとの連合を分析の対象とし、この時期に始まり連合を経過して飢饉に至る19世紀前半のアイルランド思想を、ブリテン帝国との関わりで掘り起こした。 また、イギリス20世紀前半のブリテン国内の改良思想であり国内統合のイデオロギーでもあった「新自由主義」(New Liberalism)におけるブリテン帝国デザインに注目し、J.A.ホブスンやT.L.ボブハウスの帝国論、帝国自由貿易の観点からブリテン帝国を構想したアルフレッド・マーシャルやニコルソンの経済思想を究明し、国民経済と帝国を統合しようとする新しい枠組みの「帝国のデザイン」を検証した。 さらに、アメリカ植民地問題に対するアダム・スミスの見解を、『国富論』と『道律感情論』にもとづいて考察した結果、ブリテン帝国建設の動機、その結果、および独立戦争の問題に対して、スミスが「公平な観察者」の概念を用いて論じていることが判った。ブリテン帝国におけるアメリカの経済思想の位置について研究が進展した。またアメリカにおける大恐慌期の経済思想の研究を実施し、立憲主義という観点からもアメリカの経済思想について検討した。これらを通じてアメリカにおける経済思想がルールを重視する傾向があるという知見が得られた。これらの知見は覇権の移行研究に引き継がれる。
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