研究概要 |
理論面では二つのデータを同時に用いる手法の一般理論を構築し、Censored Tobitモデルの場合のパラメターは一般的に同定されることを示した。またBinary Choiceモデルの場合にはそのパラメターが同定される為の十分条件を示し、十分条件が満たされない場合にはパラメターが一定の範囲にあることを示した。セミパラメトリック法の研究については一般的な漸近理論に対する研究をまとめ、投稿していたが、その論文は再投稿の結果採択されることとなった。ノンパラメトリックなCensored Tobitモデルの研究については再投稿を勧められて未だ返答がない状況である。 実証面においては、初等教育の労働市場におけるインパクトを、初等教育の無償化が大規模に導入された明治期日本の制度変化を自然実験と捉え、厳密に計測した。より具体的には、1872年(明治5年)制定された明治期日本の「学制」によって教育関係法規の整備、教育予算の確保や教育関連情報の整備、教員養成や教員免許に関する法整備を経て、1900年(明治33年)に義務教育の完全普及を目指して、導入された義務教育の無償化の効果を、「人事興信録」8,10、12版に収録されている個人レベルの職業データ・所得データを「国勢調査」データ等とマッチさせて解析することによって明らかにした。これまでの分析結果によると、義務教育の導入と共に、教授、博士、医者、弁護士などの専門職や議員、事務官、書記官、判事、町長など行政職、商店などの自営業に就く比率が高まっている傾向が見られた。
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