研究課題/領域番号 |
18330045
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
肥田野 登 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 教授 (90111658)
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研究分担者 |
加藤 尊秋 北九州市立大学, 国際環境工学研究科, 准教授 (20293079)
武藤 滋夫 社会理工学研究科, 大学院・社会理工学研究科, 教授 (50126330)
大和 毅彦 社会理工学研究科, 大学院・社会理工学研究科, 教授 (90246778)
小西 秀樹 社会理工学研究科, 大学院・社会理工学研究科, 教授 (50225471)
山岸 侯彦 社会理工学研究科, 大学院・社会理工学研究科, 准教授 (70286136)
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キーワード | CVM / アンカーリング / 気候変動 / メンタルアカウント |
研究概要 |
本研究では、回答者への誠実で好意のある調査自体が回答者に効用を与え、結果的に正確かつ安定したWTPを表明させることを可能とするという互恵関係仮説を提案し、そのモデル化をおこない、それをデータによって検証する。さらに、それにもとづく調査票設計方法を開発し、CVMの有効性と限界を明らかにした上で温暖化対策政策の効用を計測することを目的としている。ところが互恵関係仮説検証のためには表明選好の結果そのものが調査票に書かれた評価に際しての状況設定、フレームに大きく左右されることから安定的な回答を得るためのフレームそのものの構築が不可欠となる。CVM調査のためにはincentive compatibleな質問形式が必要となるが、一段階二肢選択でも質問で用いた数字が回答結果に影響を与える可能性があり、それを検証した所、アンカーの影響を無視できないことがわかった、そこで、一段階二肢選択方式でアンカー効果を減少させるためのお財布モデルを新たに考案した。これはメンタルアカウントモデルの一つと考えられる、回答前に回答者の予算制約を自覚させるためのものである。このメンタルアカウントフレームを用いて低い提示額すなわち5000円および30000円という高額提示額の場合について学生を被験者とした実験結果からメンタルアカウントを被験者に意識させるフレームでは明らかにアンカーリングを低下させる効果があった。ただし30000円に関しては、比較のためにおこなったincentive compatibleの性質が多くの場合満足されているGreen et alのメカニズに拠る自由回答方式の結果から30000円の提示額は平均的支払い意思額を大きく超えているため、もともとアンカーとなりにくいということも判明した。いずれにせよメンタルアカウントの効果は大きくこれによって安定的なフレームの設定が可能となった。さらにこれを用いた互恵関係の検証では、調査者の与える親切がより望ましい回答が得られるかを取り上げた。まず調査の親切さを感じるかどうかを、調査責任者である教授が立ち会うかどうかで見た結果、有意に親切さを感じる被験者が増加した。さらに正直に回答することを求めたケースにおいて、教授の立云いがあり、かつ調査が親切であると主観的に感じた被験者だけが正直に回答することを求めないケースと有意に異なった支払い意思額を表明した。このことから互恵性関係がCVMの状況下で成立し、この関係を考慮した調査方法がCVMの精度改善に寄与する可能性が明らかになった。
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