研究課題/領域番号 |
18330052
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
田中 素香 中央大学, 経済学部, 教授 (20094708)
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研究分担者 |
星野 郁 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (30199476)
高屋 定義 関西大学, 商学部, 教授 (60236362)
岩田 健治 九州大学, 大学院経済学研究院, 教授 (50261483)
楠 貞義 関西大学, 経済学部, 教授 (30067714)
細矢 浩志 弘前大学, 人文学部, 助教授 (10229198)
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キーワード | 欧州通貨統合 / EMS / ユーロ / 通貨同盟 / EMU / ダイヴァージェンス / バランスシート不況 / EPU |
研究概要 |
平成18年度の研究業績はヨーロッパ経済研究に独自の分析視角を導入した点にある。 研究業績の第1は、ユーロ域経済の2001年から05年に至る中期の停滞の原因を究明したことである。独仏伊などユーロ域大国の経済は小国と対照的に低成長が継続した。その主要な原因として99年から2000年における株式バブルの形成と01年からのその破裂によって「バランスシート不況」に陥ったとの認識に達した。日本では株と土地のはブル崩壊から1990年代に「バランスシート不況」に陥ったが、類似の現象が西欧の大国に現れたととらえたのである。90年代後半のEUのアメリカ追随ムードを批判する視角を得た。 研究業績の第2は、ユーロ域経済の分裂をECBの単一金利政策と関わらせてとらえる通説を批判する視角として、実質金利の分裂による「ダイヴァージェンスI」と並んで、実質為替レートの分裂という「ダイヴァージェンスII」の認識に至ったことである。物価上昇率格差は共通通貨の下では各国の実質為替レートの乖離に導くが、こちらは「ダーヴァージェンスI」と反対に、実質金利の高い国で相対的に物価上昇率が低くなるため実質為替レートは中期的に切り下がり、輸出促進を通じて、景気にプラスに作用す。これら2つの「ダイヴァージェンス」の相互関係を究明する課題は平成19年度の研究にゆだねられている。 研究業績の第3は、約1世紀にわたるヨーロッパ通貨統合の歴史を、研究史のサーベイも交えて、整理・分析したことである。19世紀におけるラテン通貨同盟やドイツ関税・通貨同盟などの設立の背景や成功・崩壊の原因について明らかにした。続いて、20世紀はじめに金本位制の下で進展したヨーロッパの経済・通貨面の統一性がブロック経済の分裂により後退し、1950年代初めのEPU以降再展開を見る。以上のような、ヨーロッパ統合の歴史研究を通じて、ユーロや通貨統合の今後を占う上で欠かせない歴史的・長期的視点が得られた。
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