民間の調査会社を使って、本研究の特色の一つである大規模なアンケート調査を行った。本年度は組織ないしは職場における倫理や信頼や他者に対する期待をテーマとしたので、調査対象としたのは組織で働く人たちである。特に最近頻発している組織内の不祥事や事故の発生原因を解明するために、職場の人間関係、組織や職場の人たちの態度、経営者・管理者の態度、人的資源管理、組織と職場における個人と集団の関係、組織や職場の制度などの観点からアンケートを行い、多量のデータを収集した。また、統計学・心理学・経営学の専門家からも研究協力を得た。不祥事や事故に対しては上記の要因が影響していることが判明したが、さらに詳しい統計的分析を行うとともに、組織内の信頼・個人の信念・他者に対する期待を考慮して、ゲーム論的・経済理論的に当該の問題を考察してゆきたい。 大学生を被験者としたゲーム実験も行った。まず個人の価値観を調査し、標準的な10回繰返しゲーム、最後通牒ゲーム、信頼ゲーム等の実験を実施した。ついで、個人と集団の関係を調べるために、上記ゲームの一部を比較対象として、独自に考案した実験を行った。すなわち、先手が1人で後手が3人の最後通牒ゲームにおいて、後手が多数決で受諾か拒否かを決める場合と、後手全員が相談して受諾か拒否かを決める場合の実験を行った。さらに、先手が3人で後手が1人の最後通牒ゲームにおいて、先手全員が相談して提案額を決める実験も行った。日本人は集団に影響される度合いが大きいと考えられるためである。データは膨大であるため引き続き分析をして行きたい。 欧州の大学を訪問して、5つの大学で研究発表を行った。それとともに、現地の研究者と討議・情報交換をした。このことは本研究課題の日欧の異同を考察するのにも役立った。
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