平成19年度に民間の調査会社を利用して収集した食品偽装に関するデータを使って、他の研究者とともに本格的な理論的・統計学的分析を本年度に行い、論文を作成し刊行した。論文では、まず食品市場における情報の非対称性と信頼財の概念を用いて、偽装を理論的に分析した。特に食品には信頼財の特徴が広く見られることを論じた。次いで、上記データに基づき食品偽装の実態と要因を分析した。そして、食品産業に従事する労働者はかなり偽装を見ていることをまず明らかにした。さらに、食品偽装は法制度だけでなく、食品企業の組織文化や制度や経営法によって発生頻度が異なるので、後者の面も考慮して防止することが重要であることを論じた。データを使った食品偽装の分析は先駆的であり、世界的にも希少である。 平成19年に引きつづき、大学生を被験者としたかなり大掛かりなゲーム実験を行い、その結果の一部を論文にした。論文では集団間で公共財の量を競う公共財ゲームの議論を行った。この実験ゲームは独自に考案したものである。そして、各集団内で個人の公共財への貢献を公表したり、他集団を意識させたりすることが、各人の協力を増大させることを明らかにした。また、協力的な雰囲気の下では集団の順位に従って支給される賞金の額の効果が顕著であることも解明した。さらに、個人のパーソナリティがゲームの結果に影響することを示し、文化的要因が効率性に重要であることを議論した。 そのほかに、他の研究者と共同でマルチ・エージェント・システム分析を使って、組織内の相互依存・信頼と労働市場の失業との関係を解明して論文にした。オーストラリアの大学を訪問して研究発表を行った。それとともに、現地の研究者と討議・情報交換をした。
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