平成21年1-2月に調査会社を通して政府に対する信頼についてアンケート調査を行ったが、そうして収集したデータを使って、他の研究者とともに本格的な理論的・実証的分析を平成21年度に行い論文を作成した。論文ではまず政府に対する信頼の役割を理論的に論じ、次いでどのような要因が中央政府に対する信頼の形成に寄与するかを計量経済学的に分析した。別の論文では、地方政府と中央政府に対する信頼の差とそれに影響する要因を計量経済学的に解明した。政府に対する信頼は政策に対する支持を得たり、その権限を効果的に使ったりする上で重要であるがその形成要因に関する研究は世界的にも少ない。これらの二つの論文は既に出来上がっているので順次刊行する予定である。 平成21年7-8月にも調査会社を通して、教育の社会資本形成に関するアンケート調査を行ったので、そのデータを利用して他の研究者とともに論文を作成した。そこでは、学校教育・家庭教育・社会教育のそれぞれが、社会資本の形成にどのように影響するのかを理論的・実証的に分析した。このような研究も世界的にきわめて少なく、本研究は先駆的であるといえる。 「裏切りプレミアム」などの概念を新たに導入して、信頼の定義に関する論文を執筆した。信頼を経済学の分析用具を使って定義した論文は今までになかったので、この論文も先駆的である。 大学生を被験者としたゲーム実験を行い、それを基に論文を執筆した。実験では時間とともに利得が拡大する多段階囚人のジレンマゲームを扱い、実験者の説得や被験者同士のゲーム前コミュニケーションや各段階ゲーム前コミュニケーションが協力行動にどう影響するのか、また被験者の価値観や期待が先に裏切る行動にどう影響するのかを観察し、それらを論文で議論した。文化的努力が効率性に強く影響することも強調した。この論文も順次刊行する予定である。
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