研究概要 |
本年度は,政府開発援助が被援助国に対して及ぼす効果を数量的に推計するために,インドネシア,タイ,フィリピンにおいて企業レベルもしくは家計レベルの独自のデータを収集した。インドネシア,フィリピンについてはデータ収集が完了し,予備的な分析を行った。 インドネシアの分析では,JICAなどを通じた日本の技術援助が途上国企業の技術レベルを上昇させているかについての検証をプロペンシティ,スコア,マッチングの手法を利用して行った。その結果,確かに援助プロジェクトに参加した企業は不良品率を減少させていることが見出された。ただし,プロジェクト参加企業から非参加企業への技術の伝播はなく,また日本の援助プロジェクト終了後にインドネシア政府が行った技術支援プロジェクトの効果は見出されなかった。これらの分析から,より効果的な日本の援助を行うための政策提言が重要な得られた。 また,ミクロ分析を補完するものとして,国レベルデータによるマクロ分析も合わせて行ったが,その結果目本の援助は日本から被援助国への直接投資を促進しているという結果が得られた。この分析は論文にまとめられ,内外の学会で発表した。現在は国際学術誌に投稿中である。さらに,南カリフォルニア大学において開かれたBirnkrant Development Seminar and Dynamics Seminarでも研究報告を行い,Jeffrey Nugent教授ら開発経済学の世界的研究者と,自然災害が発展途上国,先進国の貧困に与える影響について討議し,国際協力のあり方についての意見交換を行った。
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