インドネシア鋳造産業におけるJICAなど日本の援助による技術協カプロジェクトの数量的効果を推計するために、独自のサーベイを行って企業レベルデータベースを構築して分析を行った。このようなプログラム評価の難しさは、プログラムの参加者が恣意的に選ばれることにより、参加者と非参加者とを比較するだけではその効果が計測できないことであるが、本研究ではプロペンシティ・スコア・マッチングという最新の計量経済学的手法を利用することでその困難を克服した。その結果、日本の技術協力によつてプロジェクトに参加した地場企業は平均的企業が6年で達成する程度の技術進歩を達成していることが見出された。したがって、日本の技術援助はそれなりの効果があったと結論づけることができた。貧困削減プログラムの効果分析は多くの研究によってなされてきているが、本研究は技術援助プロジェクトの成果を数量的に計測したものとしてはおそらく世界で初めての試みであり、学術的意義は高い。また、開発援助を数量的に評価しようとする世界的な潮流において、援助評価の実務においても応用可能性が高い。この研究成果は、経済産業研究所における国際ワークショップで発表したほか、日本(JICA)、オーストラリア、東南アジア諸国の開発援助の実務担当者などに対しても発表しており、その成果の政策的な活用が期待される。なお、本研究の成果は国際学術誌に投稿済みである。またこの研究以外にも、先進国からの援助・公的資金が企業の直接投資に与える効果や援助と貧困削減に関する研究を行った。
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