2000年代以降の日本におけるマクロ経済レベルでのリストラクチャリングの進行と、各産業レベルでのリストラクチャリングの関係を分析するために、産業部門別の企業貯蓄・資本構成の変化と雇用調整についての研究をメインに行った。その結果、産業レベルでの負債削減や雇用調整の進行のバラツキ(分散)の増加が、経済全体のリストラクチャリングの進行と正の関係にあることが示された。また2000年代の日本企業の負債の調整については、その大部分が非製造業に集中していることを示した。このトピックについては、実物経済の部門別データを産業部門別ポートフォリオに関する分析と結びつける作業がまだ完成しておらず、研究を継続していく予定である。関連して、日本の貯蓄率の変化を、日本の家計貯蓄と企業貯蓄の代替という側面から検討した論文を、法政大学の岡田恵子氏と執筆した。 2008年秋のリーマンショックとそれに続く世界金融経済危機を受けて、マクロ経済学・ファイナンスの学界の在り方は大きく変化している。本研究はそのテーマからして影響は大であり、平成21年度の研究の1/3は、何らかの形で世界金融経済危機に関連したものになっている。特に本研究の主たる研究目的との関連では、世界金融危機の際のヘッジファンドの行動に関する分析の中で、金融危機の進展に伴って、米国市場におけるFama-French型の3ファクター・モデルにおける、ファクター構造(ファクター同士の相関関係)が極度に不安定化していることを指摘する研究を行った。
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