研究概要 |
本研究は、次のような国際金融市場の重要な側面について考察する. つまり金融・資本市場におけるボラティリティ、そして多国間における実質利子率の長期にわたる収束メカニズムと市場統合化との関係である. 計量的分析と市場ボラティリティモデル化の発展により実証的な証拠が得られた. 金融市場の変動性とリスクの定量化については、日経225オプション価格を用いて、New VIXの計算方法をもとにインプライド・ボラティリティ指標Volatility Index Japan-VXJを推計した. このVXJ指数は、研究・教育・個人投資家のために、大阪大学金融保険教育研究センターによって更新、公開されている.韓国の株価指数であるKospi200の分次データを用いて、予想ボラティリティを推計するためのインプライド・ボラティリティ指標を計算した(Maghrebi and Kim, APJFS 2007). これらのボラティリティ指標を用いて、日本・韓国の中央銀行における金融政策会議後に行う政策発表に対する金融市場の反応を検討した(Maghrebi, OEP 2008, and Maghrebi, Nishina and Kim 2007, 2008). 非線形的な調整過程については、Markov regime-switching modelのもとで定常性ADF検定を行い、G7多国間の実質利子率の長期における調整過程のメカニズムを究明した. ユーロ導入諸国間で名目的には収斂(nominal convergence)していても実質利子の差は存在し続け、名目的な収斂が実質的な収斂を保証しないのである(Holmes and Maghrebi, JIMF 2008).実質利子率平価への調整速度が減少偏差より上昇偏差に対して大きくなる結果も得られた.上昇する名目利子率と減少するインフレ率の状況下で、米国に対する実質利子率平価は成立しないことを究明した (Holmes and Maghrebi, JIFMIM 2006). さらに、株価と為替レートの共分散における非対称性・情報に対する反応を究明した(Maghrebi, Holmes and Pentecost, RPBFMP 2006 ; 本論文は2003年ノーベル経済学賞受賞者Robert Engleの著書"Anticipating Correlations, 2009"に参照)により、これらの結果は経済変数の関係における非線形調整過程および金融政策に対する非対称的な反応の重要性を示す.
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