本年度は、結果として主に長野県上田市(旧上塩尻村・上田市立博物館および周辺地域)の調査および新潟県新潟市(旧西蒲原郡巻町和納村・中郷屋村笛木家、巻町郷土資料館)の資料調査を実施し、さらに、長野県上田市旧上塩尻村佐藤隆一家の寄託文書(東北大学経済学研究科経済資料室)の整理・目録作成の作業を進めた。結果として、近世日本の<村落的共同性の多層構造>の内容を検証・深化させるとともに、割地制度等特殊な土地利用慣行をもつ地域の村落的共同性を明らかにする新たな研究の手がかりを獲得した。 研究成果は、世界農村社会学会(2008年7月、IRSA韓国大会)、および社会経済史学会(9月広島大会)、そしてイギリスでのンブリッジ・セミナー(2月ケンブリッジ大学地理学部人口史セミナー)等の学会・研究会において報告すると共に、部分的にHP等でも公開を進めた。さらに、研究成果の一部はディスカッションペーパー(東北大学経済学研究科、No.240)等に英訳し、学会・研究会等で配布した。また、研究成果を日本村落研究学会のテーマ・セッションとして報告したものを学会年報の特集号として刊行した(『近世村落社会の共同性を再考する-日本/西欧/アジアにおける村落社会の源を求めて-』(年報村落社会研究44、農文協発行、2009年1月)。さらに上塩尻村のモノグラフ研究成果を学術図書として出版した(『近世日本の地域社会と共同性-近世上田領上塩尻村の総合研究I』、刀水書房、2009年3月)。
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