研究概要 |
本年度の研究実績は3つに大別できる。 ひとつは独自データベースの構築である。これまでは,JASDAQの株式統計年報のみに基づいて,1989年から2000年までに新規公開した企業について,公開価格,資金調達額,公開株式数などのデータを抽出して基本データベースとして用いていたが,今回の研究では,2004年までに公開した企業に広げるとともに,主に2000年以降に新規公開した企業については目論見書から取締役会構造,引受会社情報,所有構造情報などを入手し,新しい独自データベースを作成することができた。現在までのところ,ファースト・ファインディングを行うとともに,データベースのクレンジングを行っている。 ふたつめは,IPOアノマリーに関する研究である。今年度は,アノマリーの原因のひとつと考えられる公開前の企業行動,具体的には企業の所有構造と会計行動(この研究では裁量的アクルーアルを代理変数として採用している)に焦点を当てた研究を行った。ただし,この研究では,これまで構築してきた基本データベースに所有構造情報を追加して行っている。この研究については,2本のワーキングペーパーを執筆し,うち1本を投稿している。 最後に,ベンチャー評価に関連して,無形資産に関する研究を行った。この研究は,ベンチャー企業ではなく,一般上場企業を対象として行った。その目的は,一般上場企業の蓄積している無形資産に対する市場の評価や企業パフォーマンスヘの影響を把握した上で,ベンチャー企業に適用することにある。この研究については,2本の論文を投稿して受理され,他に2本の論文を投稿中である。
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