研究課題/領域番号 |
18330082
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
五十嵐 伸吾 国立大学法人九州大学, ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー, 准教授 (00403915)
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研究分担者 |
露木 恵美子 明星大学, 経済学部, 准教授 (10409534)
田路 則子 法政大学, 経営学部, 教授 (00322587)
鹿住 倫世 高千穂大学, 経営学部, 准教授 (00349193)
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キーワード | ハイテク / スタートアップス / 創出インフラ / 自律性 / ネットワーク / インキュベーション |
研究概要 |
ハイテクスタートアップスの創出に関する現状は、日本のみならず欧州においても、政府や関係機関による多種多様な施策にもかかわらず、特筆すべき成果は出ていない。 その中でも少しずつ成果を出している機関や地域の特徴は、1980年代以前から取り組みを行っていること、特定の機関が主導するのではなく、複数のプレーヤーが自律的に行動しつつ連携をとって創出インフラを形成していることなどの特徴があることが明確になってきた。 日本のハイテクスタートアップスの成長モデルの特徴は次である。 米国のスタートアップスがキャピタルから資金調達し、基幹製品の開発にひたすら邁進してハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルを選択するのとは対照的に、複数の製品ラインを持つことや、受託開発、またはサービス提供を組み合わせるという複合的な事業構造によってリスクを回避している。 株式公開を果たした成功例はすべて、当初のビジネスモデルが機能せず、試行錯誤の後に成長機会を発見してから新たなビジネスモデルを構築するので、株式公開まで概ね15年以上かかっている。これはShane(2004)の指摘する米国型の成長プロセスとは別ものである。 日本における課題は、起業家の人材不足と、起業支援のネットワークが不完全または存在しないということである。起業に関わる人材が豊富で、起業支援のネットワークが機能しているシリコンバレーやケンブリッジ地域は異色であるものの、それら地域でも人材育成やネットワーク構築には多くの時間がかかっている。日本においても起業インフラシステムが構築されるまでには、長い時間が必要になると考える。 アジア諸国におけるハイテクスタートアップス創出については、政府が政策的に創出環境の整備と人材育成を行っている。戦略的に成長させる分野を選定し、当該分野において世界最高水準の研究環境を整備し、研究者を集め、技術の移転や商業化を推進している。シンガポールの政策は技術移転が中心であり、ハイテクスタートアップスの創出は大学等に任されている。香港は、大規模なリサーチパークの整備などインフラ整備を開始したところであり、内発的なハイテク起業の促進は今後の課題である。特筆すべきは台湾で、新竹地域を中心とする半導体産業の集積は、政府系研究機関(ITRI)および大学からの技術創出と起業人材の輩出によって生み出された。さらに起業を支援する人的ネットワークが大学および個人レベルで存在している。台湾の成功は、日本にとって示唆に富んだ事例である。
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