研究課題/領域番号 |
18330087
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
秋野 晶二 立教大学, 経営学部, 准教授 (50202536)
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研究分担者 |
林 倬史 立教大学, 経営学部, 教授 (50156444)
坂本 義和 千葉経済大学, 経済学部, 准教授 (70350288)
山中 伸彦 立教大学, ビジネスデザイン研究科, 准教授 (40339594)
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キーワード | パーソナルコンピュータ / イノベーション / イノベーションの二重化 / 細部化された分業構造 / 多品種大量生産 / EMS / ODM / 開発・設計・生産・調達のグローバルネットワーク |
研究概要 |
今年度は、本研究の最終年度となるため、各自の研究成果と全体の報告書のとりまとめを目的に、各自の報告を中心に6回の研究会を開催して研究を進めるとともに、論文や学会報告などを通して研究を公開した。今年度の研究を通して得られた成果は以下のとおりである。 PCのイノベーションは、主要な各構成部品の高速化と大容量化を基礎として、PCの多機能化・汎用化という一般的な発展傾向を通じて実現されてきた。80年代半ばまでは、部品メーカーのイノベーションを基礎として、PCメーカー各社がこれを新製品へと組み合わせることで、いわば自然発生的にイノベーションが実現していった。その後、IBMPCが事実上の標準となり、互換機が多数市場に投入されるようになり、IBMの規格、とりわけバスアーキテクチャがイノベーションの方向を決めるようになった。しかし80年代後半にはIBM自身が自らの規格から離脱するに及んで、多数の互換機メーカーをはじめ、部品メーカーやソフトウェア・メーカーが、PC/AT互換機を拡張するバスアーキテクチャの規格を共同で形成するようになった。その後、90年代には、CPUメーカーのインテルとOSメーカーのマイクロソフトがこのバスアーキテクチャの規格を進化させるのに主導的な役割を果たすようになった。その結果、イノベーションは、これらの企業が中心となってロードマップを作成し、いわば計画的に方向づけられるになった。こうして90年代以降、PCメーカーによる通常の新製品開発としてのイノベーションとは異なる次元のイノベーションが分離し二重化した。PC産業の持続的で短期間でのイノベーションとその迅速な製品化・量産化は、この二重のイノベーションネットワークと、これを製造に結び付けるEMS/ODMの生産・調達ネットワークがグローバルな規模で制度化され、構造化されることで実現されてきた。こうしてPC産業は、歴史的には持続的なイノベーションを起こしながら、多様な製品を短期間で大量に生産する体制を構造化した。
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