研究概要 |
北東アジア諸国・諸地域(日本,韓国,中国,台湾,香港,等々)における福祉システムに関する国際比較研究においては,現在,福祉オリエンタリズムのアプローチが影響力を持っているが,本研究では,そこから脱却したポスト・オリエンタリズムのアプローチを確立するとともに,他方で,その成果を生かしながら西欧の経験への参照に偏重しがちな現在の福祉レジーム論の理論的洗練をはかり,これらに立脚しながら国際比較研究を行うことを目指している.四カ年計画の初年度である平成18年度は,(1)ポスト・オリエンタリズム・アプローチの理論的検討,(2)北東アジア諸国に関する現状分析,(3)日中間の国際ワークショップを行うことを計画した.この計画のうち,(1)と(2)に関しては,福祉国家形成のパターンにおいては土着的要因や文化的要因よりも,福祉国家形成への離陸時期がいつであるかという点と,そのときの国際環境の影響力の方が大きいとの作業仮説を導出し,その検討を行った.その成果に関しては,日本語で論文発表をするとともに,韓国や中国に出向いて両国の研究者との意見交換を実施した.また,これに加えて,日本における東アジア研究の現状や,日本の最近の社会政策の動向についても中韓両国において紹介に努めた.(3)については,2006年11月に北京大学社会学系において,ジョイントのセミナーを実施して,中国側からは北京大学の研究者が,日本側からは東京大学を初めとする各大学の研究者が研究発表し学術討論を行った.その結果,日中間の共同研究のさらなる発展についての合意が達成された.
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