利用者が訪問介護の質を評価する満足度尺度を開発するため、ヘルパーと利用者の援助関係を測る尺度案を既に提起したが、次の段階として事業所の対応(サービス運営)の次元を測る尺度の開発を目的として調査を行った。平成16年に行った満足度調査での訪問介護利用者の苦情不満を分析すると共に、サービス提供責任者からの聞き取りによって、事業所の対応のなかでサービスの質に影響を与える事項を整理し、評価項目の原案を作成した。原案に専門家の助言を入れて修正した37項目を中心に自記式の調査票を作成し、D市管内の40事業所の協力を得て平成18年11月に予備調査(対象数640件)を行い、447件(70%)の回答を得た。 調査では事業所の対応を評価する項目だけでなく、サービス提供責任者氏名の利用者の認知、要望を出した経験など、事業所の対応への評価と関連すると思われる設問を設け、事業所の対応への全体的な満足度との関連を調べた。この結果、担当のサービス提供責任者の名前を知らない利用者や訪問介護計画の交付をよく分からない利用者は、そうでない利用者と比べて、事業所の対応への満足度に統計的に有意な差があった。また満足度項目の分布などを分析し、項目の特性を検討した。これらの結果を平成19年3月、調査報告書にして刊行すると共に、同月D市管内の40事業所への調査報告会を実施した。 事業所の対応への満足度とサービス提供責任者の役割との関連について得られた知見は、第49回老年社会科学会(6月)で報告する。事業所の対応を評価する項目について主成分分析を行った結果、5因子が抽出され、説明と同意、サービス範囲、要望への対応、交替とサービスの継続性、サービスの均質化など当初の構成概念とほぼ一致した。事業所の対応を測る項目の適切さ及び信頼性、妥当性については、平成19年度に行う本調査での更なる検討が必要と考えられた。
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